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Creators Voice

カリグラファー 白谷 泉

― なるほど。それは文字を扱うデザイナーにとっても参考になる話ですね。

カリグラフィーを学ぶと文字の形や強弱のバランスなどもわかるようになります。例えばローマンキャピタル体の文字の中に太い部分、細い部分、中太の部分がありますね。なぜここがこの太さなのか、なぜセリフがこの形なのか、実際に書いてみると、それらが当たり前のことだと腑に落ちると思います。

ロゴをデザインするとき、最近は既存のフォントをカスタマイズしていくケースが多いせいか、欧文文字として不自然なものを時々見かけます。文字の構造や成り立ちなどを知った上であえてそうされているのなら良いのですが、無自覚な場合も多いようです。カリグラフィーの基本を押さえてデザインされたロゴは目にも心地いいんですよ。長く愛されるものになると思います。

実は紋章のデザインについても様々なルールがあります。それらはあくまでも正式な紋章を作る上の条件ですから、紋章風のデザインを制作する際に守らないとNGというわけではありません。ただそれらを知った上であえてルールから外しているのか、もしくは知らないで雰囲気で作ってしまうのか、そこの意識の違いを重要と感じるかどうかです。

平筆で描いたローマンキャピタル体
上:西洋紋章作品 / 下:カリグラフィー作品例

― 帰国後はご自身の創作活動と並行して、商業的なお仕事も積極的にされていますね。今後の夢や野望を教えてください。

創作活動としては、日本人カリグラファーとして何ができるのか・・を常に模索しています。日本人の感覚を研ぎ澄まして、西洋カリグラフィーをどう表現していくか。ここ数年は特に「線と線質」にフォーカスをあてて作品制作をすることが多いです。
あとは、シンプルですが、言葉や文字を表現することを心から楽しむ、そしてカリグラフィーの素晴らしさをもっと伝えていきたい。そこが原点であり、揺るぎなく目指していることかもしれません。

仕事においては多岐にわたりますが、デザインの業界でさらに手書き文字の可能性を広げていきたいです。手書きならではの迫力、繊細さや温かみ、そしてオリジナリティ。その良さをもっと知ってもらえるよう、そして後に続くカリグラファーたちのためにも、今自分にできる事は何かを日々考えつつ、練習を重ねて技術を磨き続けたいと思います。
真逆かと思われるかもしれませんが、カリグラフィーもデジタル化に対応していくべきだと思っています。絶対にぶれてはいけない部分と時代に溶け込んでいく部分と、そのバランスを取りながら進化していく。時の流れとともに表現方法が多様化していくのは当然ですし、カリグラフィの文字も長い歴史のなかで変化し続けてきましたから。

白谷 泉 Shiratani Izumi
広告会社勤務を経て、1999年カリグラフィー留学のため渡英。カリグラフィー・紋章美術・装飾美術のHNDを取得後、Royal Warrantを持つカリグラフィーオフィスに勤務。ロンドンで個展開催。2004年末に帰国し、日本を拠点にフリーランスとして活動。
カリグラフィーブック(三戸美奈子著/誠文堂新光社) 共著
日本カリグラフィースクール特別講座講師 / 白谷泉カリグラフィースタジオ主宰
Calligraphy & Lettering Arts Society (UK) フェロー / NPO法人 Japan LetterArts Forum 理事
http://www.izumi-shiratani.com/

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